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運送業の10年後はどうなる?

物流の危機がやってくる!

Webショッピングや旅行の荷物の配送など、暮らしの中にごく当たり前に入り込んでいる宅配便。各社の取り扱い個数(メール便を除く)は、10年前に比べて10億個以上増加しているそうです。

その中で深刻化しているのがドライバー不足の問題です。2017年にボストン コンサルティング グループにて行われた調査では、その時点のトラックドライバー数は約83万人。宅配便ビジネスなどの条件を考えると、2027年には96万人のドライバーが必要とされています。一方で、このままの社会環境が続くと、業界が確保できるドライバー数は72万人にとどまり、じつに24万人が不足するという数字すら挙がっています。

参照:BCG「日本の物流トラックドライバーの労働力は2027年に需要分の25%が不足。96万人分の労働力需要に対し、24万人分が不足と推計~BCG調査」
https://www.bcg.com/ja-jp/d/press/Japan-press-release-27october2017-logistics-174826

インターネットがどんなに発達しても、人々の暮らしがある限り、モノを動かす物流の必要性がなくなることはありません。もし、ドライバーが不足して物流産業が衰退していくと、食料や生活必需品の供給も滞り国民経済そのものが大きく後退していくでしょう。

ここでは、この深刻なドライバー不足の原因と、現在考えられている解決策について紹介します。

最大の理由は高齢化

ドライバーが不足して、社会の動脈にまでも機能不全をもたらそうとしている最大の原因として、現役ドライバーの高齢化ということが挙げられています。国土交通省のデータによると、40代~50台前半という中年層の占める割合が全産業の平均値よりも10%以上も高くなっています。(道路貨物運送業は44.3%、全産業の平均値が34.1% / 国土交通省「ドライバー不足等トラック業界の現状と課題について」)。

参照:国土交通省「ドライバー不足等トラック業界の現状と課題について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/jidosya/tekiseitorihiki/img10/10shiryou1.pdf

このようなことがなぜ起こったのか?最大の理由といえるのは「ドライバーのなり手がいない」ということです。宅配便のドライバーなどでも「大きな荷物を運ぶ」「エレベーターのない階段を駆け上る」など肉体的負担は少なくありません。また、長距離便のドライバーのように、夜通し一人で高速道路を走らなくてはいけないような仕事もあります。一方で、以前はドライバーといえば「仕事は厳しいが、収入はいい」という印象がありましたが、景気減速が続く中で、長距離便といえども「それほど飛び抜けて素晴らしい収入でもない」というようになっています。

法令遵守の姿勢が逆に企業の首を絞める

もう一つ無視することのできないのはコンプライアンスの問題です。過去数年、過剰労働を原因としたバス事故などが相次ぐ中、行政では、過剰労働の禁止と運用の厳格化を求めるようになっています。ドライバーの労働時間は1日原則13時間以内、最大16時間以内(月間293時間以内)と規定されています。

また、4時間ごとに30分の休憩をとるという既定もあります。行政は、この既定を厳格に守っていくことを運送会社に要求し、違反すると免許取り消しなどのきびしい処分が下されます。このために、輸送する貨物の総量が以前と同じでも、必要とされるドライバー人数は過去より多くなっているという現実があります。これもまた深刻なドライバー不足の原因といえるでしょう。

AIの導入は救世主となるか

深刻な状況に対する根本的な対策として考えられているのが、AIの活用です。現在すでに産学連携プロジェクトが進み、荷主の物量分析/景況感/天候/工数の過去実績などのデータをAIに学習させることにより、物流にかかわる人数を最適化していこうとする試みが行われています。これにより、ドライバーに関しても、必要な人数を割り出して無駄な動きをなくしたり、物流基地の自動化推進により他部署の人員をドライバーに再配置したりするなどの解決策が考えられるかもしれません。

いずれにしても、ここしばらくは物流企業各社がドライバー不足で四苦八苦する状況は続くことでしょう。しかし逆の方向から考えてみると、軽貨物ドライバーになることを考える求職者にとって、賢く動いて自分を高く売ることができる時代が訪れた!絶好のチャンス到来ともいえるでしょう。

通販市場の拡大

通販市場の急成長・拡大

ドライバー需要の影に、インターネットの通販市場の拡大が挙げられます。これだけドライバーが求められている背景には、ネット通販の拡大による取扱荷物個数の増加があるためです。特にネット通販は、年々成長を遂げています。

経済産業省の発表によると、2010年のEC市場規模は7兆7,880億円でした。しかし、年々市場規模が拡大し、2019年には19兆3,609億円と、10年未満でありながら倍以上に成長しています。さらにその中での物販系EC比率は、2010年には宅配荷物の2.84%のみであったものの、2019年には6.76%と比率そのものも上昇しているのがポイントです。

スマートフォンの普及により、気軽にネット通販を利用できる時代が到来したからである点は言うまでもありませんが、それらの荷物を運ぶのはドライバーです。また、今後も増加傾向にあると予測されていることから、さらにドライバーの需要が高まるでしょう。

参照:経済産業省「国内電子商取引市場規模(BtoC及びBtoB)」https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html

今後は5Gなど、さらなるインターネット技術の進化が待っています。結果、インターネット環境がより進歩することになるので、EC事業が衰退する可能性は低いです。むしろ、今後はまだECサイトを利用していない高齢者等が、インターネット環境の更なる進歩によって利用するであろうとの予測もあります。

社会情勢から、お店での購入ではなくネット通販での買い物が推奨されるようになるなど、EC事業に関しては成長が見込まれているのも魅力です。

日本だけの市場ではないからこそ

インターネット通販の魅力の一つに、世界の商品を購入できる点が挙げられます。通販は、古くから行われていました。テレビショッピング、あるいは通販雑誌の存在は決して珍しいものではなく、利用した経験をお持ちの方も多いでしょう。

しかし、それらとインターネット通販には大きな違いがあります。それは、市場エリアです。例えばテレビショッピングや雑誌の通販は、あくまでも国内の話です。しかし、インターネット通販の場合、海外からでも商品を購入できます。言葉の壁に関しても、翻訳ソフトやブラウザの翻訳機能の向上により、日に日に利便性が向上している現代。実際、決して外国語が堪能ではないものの、問題なく外国の通販にて商品を購入している人もいます。

外国の商品を購入したとしても、自宅住所が日本国内である限り、最後は日本国内のドライバーが届けることになります。結果として、ドライバーが必要だと分かるのではないでしょうか。

ドライバー環境の変化について

人手不足だからこそ

「ドライバー」というお仕事に対し、悪いイメージをお持ちの方もいるようです。確かに、かつてドライバーというお仕事は長時間拘束されたり、休みがなかったりということが当たり前でした。

しかし、そのような環境にも、変化の兆しが見えつつあります。コンプライアンス遵守が求められる時代になった点も挙げられますが、根本的に日本国内が少子高齢化による労働者不足で悩まされているのが課題です。どの業界も人材確保が急務となっています。

労働人口が多い時は、企業側の買い手市場でした。そのため、「代わりなどいくらでもいる」というスタンスが通用していたところもあるのかもしれません。実際、そのような罵詈雑言を浴びせられた労働者もいるでしょう。

しかし、現在、さらには今後も労働者不足から、労働者側の売り手市場が形成されてきました。確保した人材を手放さないよう、良い待遇を用意している企業も増えているはずです。

労働者不足改善が見えにくい業界

少子高齢化による労働者不足は、誰しもが知るところでしょう。行政としても、非正規雇用労働者の正社員化やマッチング支援など、人材確保対策を行っているほどです。

また、ドローン、あるいは荷台の連結など運送業界としても新しい技術の導入により、人材不足解消が進められていますが、難しいと言わざるを得ません。特に日本全体で頼っている外国人労働者に関しては、免許の問題もあれば文化の問題もあります。

参照:厚生労働省「人材確保対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053276.html

ドライバーとは文化でもある

車を運転し、依頼者の元に荷物を届ける。委託ドライバーのお仕事は、決して難しいものではありません。むしろ、日本人であれば免許さえあればすぐにでも取り組めることでしょう。一方で、外国人労働者にとっては免許の問題もありますし、荷物を届ける際のマナーについても学ばなければなりません。

車の運転は、日本人ドライバーにとっては特に難しいことではないでしょう。しかし、国によっては日本とは異なる右車線の所もあります。このような細かい部分は順応が難しいことから、ドライバー業界は人手不足解消が難しいとされています。裏を返せば、技術革新が起きたとしても、ドライバーのお仕事はAIに奪われにくいと考えることもできるでしょう。

AIの進歩は目覚ましいものがあり、進歩を喜ぶ一方で、仕事が奪われるとおびえている業界があるのも事実です。その点ドライバーに関しては、長距離あるいは僻地への配送の場合には期待できます。ただ、ストップ&ゴーを繰り返す委託ドライバーの場合、やはり人の力でなければ難しいのではとも言われているのが現状です。

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※調査日時2017年7月

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